三平のビッグファイトに立ち会う
那珂川の、清水から塩原に抜ける川べり。
ここは桜のトンネルの名所だ。
私が少年とであったのはその対岸。
少年の名は三平三平(みひらさんぺい)。
「ギョシンさん、きたっ。ヤツだ!
んぐー、すごい引きだなや!
助けてけれー」
「サンペイくん、こいつぁ、持久戦になりそうだぜ」
「わかってるんだども・・・。にぎー、腕がしびれるっぺ」
その後約1時間にも及ぶ格闘。
「サンペイくん、やつはもう降参だぜ」
「んだなー、ようやくツラ出しやがった」
「どれどれ、サンペイ、取り上げるのを手伝おうか」
「けへっ、イッペイじいちゃん、笑わせんなや。
一人で十分。それにおら、こいつは取り上げねえ。
放してやろうと思ってるんだ」
「さすがサンペイくん!」
そして戦いは終わった。
身の丈二尺六寸(約80cm)。
この淵の主とも言えるであろう巨鯉は
天才つり少年の軍門に下ったのである。
われわれが通り過ぎようとしたとき
背後から今までに聞いたことのないような水音を聞いたのは
幻だったのだろうか・・・。
鯉に恋して、なんちゃって・・・。
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